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去り行く一切は、比喩に過ぎない。
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大学に入ってから読んだまともな本
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2025/01/18(Sat) 19:04:20
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少し畏まったあらゆる場面において、「させていただく」という言い回しはよく使われているが、いささか安易に使われ過ぎではないかという点が気になっている。

「させていただく」には「(相手方の許可を得たうえで)…させていただく」という、相手方との上下関係、許可命令関係が包含されている。あまりに補助敬語として幅を利かせているので分かりづらいが、「させていただく」から敬語要素を取り払えば「やらせてもらう」であることからも、許可という要素が含まれていることが窺える。所有者に断って何か物を借りたときに「使わせていただきます」というような使い方が本筋だ。

ところがビジネスの現場では、殊に形式ばった退屈な会議などでは、そんなことお構い無しに濫用されている。

「それでは、定例会議を始めさせていただきます。お手元に配らせていただいたレジュメは後程詳しく説明させていただきますので、まずはスケジュールの共有をさせていただこうと――」

とまぁ、これは極端な例にしても、概ねこんな調子である。どんだけ使わせていただくねん。
ここに更に『さ入れ(※)』が加わった日には、最早聞くに堪えないくどすぎる言い回しの出来上がりだ(この恨みがましい文章から察せる通り、上司の敬語がまさにそれ)。
※さ入れ
「配らさせていただく」のような、五段動詞+させていただくという形。本来は不要な「さ」が入っているので「さ入れ」と俗称する。くどいというか、普通に誤用である。

「させていただく」はとにかく使い勝手がいいのだ。何しろ動詞の後ろに付けるだけで、謙譲語がすぐ出来上がる。補助動詞を使った謙譲語には「お…する」という形もあるが、これは動詞の前に「お」を付けて、後ろには「する」を付けるという2つの作業が必要だし、動詞を口に出す前に「謙譲語にするぞ!」という意識がなければ謙譲語として完成しないという点で、「させていただく」より幾分高度だ。
使い勝手の良さゆえに「させていただく」は状況を問わず使う人が増え、そのうちに許可という意味合いが薄れていき、更に使用が進んだという流れなのであろう。正のフィードバックだ。

しかし、本来の「わざわざお許しを頂いて、そのうえで行う」という状況から分かる通り、「させていただく」は謙譲語の中でもへりくだり度合いが高い語である。そのため、これが連発された文は、必要以上にへりくだっている印象を与えてしまう。自らを過剰に卑下する態度はビジネスにおいて常に有効とは限らないし、行きすぎた卑下は最早相手への敬意たりえず、慇懃無礼ですらある。「させていただく」の便利さに甘えるのではなく、状況に応じた適切な敬語を使うように意識したいものだ。畏れながら、まずは上司に提言させていただきたい。
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